ハイレゾ音源サイトで販売されている音源は、FLACとALACがあります。たまにどちらを使えばよいかという質問を見かけます。果たして、どちらを使えば良いのでしょうか。
FLACとALACについて知る
FLAC
FLACはFree Lossless Audio Codecの略になります。Freeとつく通り、当初からオープンソースで開発されました。
その歴史は古く、2000年に最初のバージョンがリリースされています。今ではハイレゾ音源サイトの最も標準的な音源として使われています。
ALAC
ALACはApple Lossless Audio Codecの略になります。Appleというのは、もちろんiPhoneやMacのアップル社になります。
当初はiTunes用の可逆圧縮形式として採用されていましたが、2011年10月からオープンソースになりました。
圧縮率の差
FLACとALACは圧縮率が異なります。筆者の手元の環境でテストしてみたところ、以下のようになりました。
e-onkyo musicで購入した「Beethoven: Symphonies Nos. 5 & 7」のトラック1で検証しました。
パターン | 圧縮後サイズ | 圧縮率 |
---|---|---|
圧縮解除した場合のサイズ | 516,175,046 バイト | 100% |
ALAC圧縮した場合のサイズ | 289,921,103 バイト | 56.2% |
FLAC圧縮(圧縮レベル8)した場合のサイズ | 273,562,951 バイト | 53.0% |
FLAC圧縮(圧縮レベル4)した場合のサイズ | 285,630,984 バイト | 55.3% |
FLAC圧縮(圧縮レベル0)した場合のサイズ | 343,397,869 バイト | 66.5% |
参考:配信ファイル(FLAC)のサイズ | 276,004,392 バイト | 53.5% |
FLACは圧縮レベルを9段階まで調整できるので、一番低い、一番高い、中間の圧縮率を載せています。ALACは圧縮率を調整できない仕様になります。
結果はご覧の通りですが、FLACの圧縮レベル8が最も圧縮率が高く、次いでALACとなります。その差は16MBになります。元のファイルサイズが516MB程あるため、それを考慮すると圧縮率はほぼ同じと言えます。
結局のところどちらを選べばいいのか?
両方ともオープンソース、圧縮率もほぼ同じで方式のスペックに大した差はありません。
ここまでくるともはや好みの問題でしかないのですが、強いてあげるとすると選ぶポイントは以下の通りになります。
- より多くの機器で再生したい場合はFLAC
- iTunesでも再生したい場合はALAC
最近発売されるハイレゾプレイヤーではALACが再生できるので、前者はあまり気にしなくても良いポイントでもあります。
となると後者が重要なポイントになってきますが、ハイレゾ音源をiTunesで再生できたとしてもiPhoneやiPodには仕様上転送できません。ですので、純粋にハイレゾ音源をiTunesで管理したいという方はALACを選択することになります。
このような感じで、結論はかなり微妙な内容になります。好きなものを選ぶと良いでしょう。(Apple信者ならALACとか・・・)
より詳しく知りたい方向けのコンテンツ
英語の情報になりますが、PCオーディオの技術フォーラムであるhydrogenaudioのWikiにわかりやすい表がありました。FLACとALACの部分を抜粋します。
Features FLAC ALAC Encoding speed[A] very fast fast Decoding speed[A] very fast fast Compression[A][B] 57.0% 57.8% # presets 9 2 Error handling[C] yes no Tagging Vorbis tags iTunes Hardware support very good very good Software support very good very good Hybrid/lossy LossyWAV no RIFF chunks yes no Streaming yes yes Open source yes yes Multichannel yes yes OS support All All
A Speed and Compression are based on each encoder’s default settings and taken from this comparison. B The Compression ratio is compressed size/uncompressed size * 100. So, lower is better. C Error handling means that a codec can detect a corruption (flipped bit) in a file and warn the user about it, but it will still decode the rest of the file. D The official Monkey’s Audio decoder does not support decoding through errors, but this may be achieved with FFmpeg or Winamp, though likely not, when the “Insane” preset is used.
利用者視点から見ると、Error HandlingがFLACの方が優位性があります。これは、コーデック側でデータの欠落を検出すると、それをユーザーに通知する機能になります(そのまま再生は継続されます)。
このように、詳細な情報を見てみてもFLACとALACにはそれほど大差がないことが判ります。これを見ても、好きな方を選んでOKということが判ります。
残りの詳細はhydrogenaudioのWikiをご覧ください。知らない可逆圧縮コーデックがずらりと並んでいます。
テディおじさん says
大変わかりやすい解説を有難うございました。CDの高音質読み込みをiTunesでALACか他のソフトでFLACにするか迷っていたので助かりました。iTunesにファイルとしてFLACを入れてHF Player等ソフトを使ってiPodでFLAC再生は可能ですが、とても面倒くさいのでiTunesでのCD読み込みはALACでやろうと思います。ただ手持ちCD1000枚ほどを全てALACで入れると大変な容量になるので、iTunes音楽も128GB限界のiPodTouchでは無くて、他の外付けSD可能な音楽専用プレーヤーに読み込ませて使用ということになります。本当にAppleは高音質オーディオ再生に適した容量の音楽プレーヤーを作る気が無いのでしょうね。iPad Pro 1TBを音楽鑑賞目的のみで使う人はいないのですから。重ねて情報感謝します。