以前基礎知識に関する記事「3.音源再生のために用意するもの(ハード編)」でNASを用意すると、データが消失しないように耐障害性を向上させることができる、そして無線LAN(Wi-Fi)環境でデータをやり取りすることに向いていることを書きました。
ハイレゾ音源を扱う場合、データのサイズが大きいのでデータの転送速度が確保できるようにしておくと、使い勝手を大きく向上させることができます。接続安定性を考えると有線接続が望ましいのですが、せっかくNASを使うのであればWi-Fi環境で無線のメリットを享受しておきたいものです。
今回は、Wi-Fi接続で押さえるべきポイントを解説したいと思います。
Contents
Wi-Fi環境でNASを利用するイメージ
PCはNASと通信するために、Wi-Fiルータを介します。
電波の干渉が少ない規格を使う
Wi-Fiは電波を使って通信を行います。Wi-Fiで利用する電波の周波数帯には2.4GHz帯と5GHz帯が存在します。ここで使うべき規格は5GHz帯になります。
一般的にWi-Fiで頻繁に使われる周波数帯は2.4GHz帯になりますが、2.4GHz帯は多くの機器が利用している周波数帯になるため、他の機器との電波と干渉する恐れがあります。干渉をするとデータの再送が起こるため、その分データの転送速度が低下することになります。
電波が干渉しうる2.4GHz帯の代表的な機器を列挙すると、以下のようなものがあります。
- Wi-Fiを使う機器(パソコン、スマートフォン、プリンター、ゲーム機、電子書籍端末など)
- Bluetooth機器(マウス、ヘッドセット、スマートフォン、オーディオなど)
- USB3.0機器 ※対応機器からのノイズが干渉
- 無線マウス
- 電子レンジ
- コードレス電話
上記のように、どこの家庭にでもあるような機器になります。自宅の環境のほか、近所にある機器からの影響もあります。そのため、2.4GHzの電波干渉はもはや避けることができません。
そのため、5GHz帯のWi-Fiを使うことが必要になるのです。
Wi-Fiの規格を理解して製品を選択する
大前提
できるだけ高速なWi-Fiを利用するには、Wi-FiルータとPC側が両方とも同じWi-Fi規格に対応している必要があります。
もし、片方の規格が古い場合は、より下位の規格で通信するようになります。
Wi-Fi規格の種類
電波の干渉が少ない規格を使う必要性を念頭に入れた上で、今どきの家庭で使われているであろうWi-Fi規格を見ていきます。下に行くほど新しい規格になります。
規格 | 周波数帯 | 理論速度 |
---|---|---|
IEEE 802.11g | 2.4GHz帯 | 54Mbps |
IEEE 802.11a | 5GHz帯 | 54Mbps |
IEEE 802.11n | 2.4GHz帯, 5GHz帯 | 65Mbps – 600Mbps |
IEEE 802.11ac | 5GHz帯 | 292.5Mbps – 6.93Gbps |
4年以上前の機器を使っている場合は、IEEE 80.211n以前の通信規格に対応している製品になります。
ここで注意したいのは、IEEE 802.11nの対応製品を使っている場合になります。製品によっては5GHz帯に対応していないものがあります。その場合は、ファイル転送速度が電波干渉によって落ちる可能性があります。また、5GHz帯を併用して使える製品だとしても、2.4GHz帯側の干渉状況によって速度低下を引き起こす場合もあります。
対応ポイント
古い製品を使い続けたい場合
私の知り合いには8年前のWi-Fi製品を使っているような方もいます。原則は買い替えがお勧めですが、どうしても古い製品を使い続けたい場合はIEEE 802.11n、それが使えない製品ではIEEE 802.11aの利用をお勧めします。
Wi-Fiに接続するときに選択するSSIDで、製品の標準設定を使っている場合は末尾が”-a”と”-g”になっているものがあります。その場合は”-a”の方に接続すると比較的安定した通信ができるようになります。
これから製品を購入する場合
規格表を見ていただくと判る通り、IEEE 802.11acは5GHz帯のみを用いた製品であり、かつ理論速度も他の規格より圧倒的に速いです。ですので、基本的にIEEE802.11acの対応製品が唯一の選択肢となります。
IEEE 802.11nまでに対応した製品が、値下げ品として電気店に置いている場合がありますが、上記の理由より必ずIEEE 802.11acに対応した製品を購入することをお勧めします。筆者の経験では、規格が上位なだけで通信速度が3倍になりました。
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